ABIT BF6マザーボードでCeleron300Aのオーバークロックを再現

ABITのBF6マザーボード

ABITのSlot1マザーボードとCeleron300Aは、自作PC黄金期を語るうえで外せない組み合わせです。ここではABITのBF6マザーボードを用いて440BXの安定性とSoftMenuIIIの魅力を再現してみたいと思います。

BF6マザーはBH6の血筋を引き継ぐ完成形

ABITのBF6マザーボード

BH6の弟分にあたるABIT-BF6

当時Celeron300Aとの組み合わせで人気だったのがABIT BH6です。BIOSから設定を追い込める仕掛けが早い段階で浸透し、オーバークロックを特別なテクニックではなく誰でも試せる趣味の領域へ近づけました。

その流れを受け継ぎつつ、Slot1世代のABITとしての集大成を締めくくったがBF6と言えます。

いま振り返れば、BH6から続いたシリーズの中で、BF6はある意味「完成形」と言える存在でしょう。

本命はBH6だが中古市場ですでに品薄

BH6はブームの頂点として語られやすい一方、現在は中古市場で程度の良い個体が見つかりにくく、見つかっても劣化など状態の差が大きいのが実情です。

熱狂を知っているほど「当時のまま動かしたい」と思うのに、肝心の本命が手に入りづらいのが悩ましいところでもあります。

チップセットはBH6と同じ440BX

Intel440BXチップセット

440BXの表面にはFW82443BXの印字が見える

BH6とBF6に採用されているチップセットは、どちらもIntel 440BXです。この440BXと今回組み合わせるCPU Celeron300Aの相性が抜群(どちらもIntel純正なので当たり前ではあった)であり、安定動作の基礎となりました。

オーバークロックは、プラットフォームが不安定だと狙った周波数で安定しません。440BXは、FSBを100MHzへ上げたときでも挙動が破綻しにくい耐性があり、Celeron300Aの「66→100MHz」という単純なベースクロックを成立させやすい環境でした。

CPUはもちろんCeleron300A(コスタリカ産SL2WM)

正面から見たCeleron300ACPU

Slot1形状のCeleron300A、表面の銅が剥き出しなのは冷却効率アップを狙って研磨したため

ここでのもう一つの主役はCeleron300Aです。手元にあるのはコスタリカ産のSL2WMで、型番だけで当時の熱を懐かしく感じる方も多いはずです。定格はFSB66MHzの300MHzですが条件が揃えば性能が本来とは別領域へと達します。

450MHzという動作周波数は今では低性能なスペックですが、もとが300MHzとされているものが1.5倍の性能まで跳ね上がるという話に、皆が自分で試さずにいられなくなったというわけです。

ハードウェア最小構成でPOST表示までの起動

最小構成で組み立てたBF6マザー

ここでのオーバークロックの再現は、まずはメモリとVGAを最低限に絞り余計なドライブやストレージは載せずに起動確認をします。

オーバークロックのテスト環境

オーバークロックのために準備した再現環境

狙いはPOST表示までの到達です。BIOSロゴが出てCPU名が表示されれば当時の雰囲気はほぼ再現されます。逆にOSを走らせてしますと、CPUの動作周波数の表示はすぐ画面から消えてしまうので、むしろ、この画面が出せることが一つの醍醐味でもあります。

SoftMenuIIIでFSB66→100で450MHzを設定

ABIT-BF6のSoftMenuⅢ

SoftMenuⅢが表示されたモニター画面

BF6の見どころはSoftMenuIIIです。基板上のジャンパには触れずBIOS上でFSBや電圧などの設定を追い込めるギミックが、当時の自作ユーザーに広く支持されました。

ベースクロックを100に設定

450MHz起動を狙ってFSBを100に設定

なお、当時マザーボードメーカーと言えば、国内ではASUSやGIGABYTEあたりが定評で、これら安定志向を好むコアなユーザーからは、BIOSでベースクロックを設定と言う作業は不評だったかもしれません。

POSTで表示されたCeleron300Aの450MHz動作

POST画面に表示されたCELERON(TM)450MHz

SoftMenuIIIでFSBを66MHzから100MHzへ設定すると、倍率固定4.5倍のCeleron300Aは450MHzとして表示されます。300MHzのCPUが100×4.5で450MHzへ、この動作周波数1.5倍がベースクロックの変更だけで実現してしまうところが伝説の核心です。

User Defineでより細かな設定が可能

User Defineの設定画面

User Defineなら1MHz単位で設定ができる

SoftMenuIIIはFSBが66や100といった基本設定だけによらず、User Defineのメニューからは、より細かく追い込める機能が存在しました。これを使えばFSBは1MHz単位で設定できるため個体差に合わせて限界を試しやすくなります。

この自由度が、オーバークロックを一部マニアの特別な技術から、より多くの自作ファンが試せる娯楽的な挑戦へ近づけました。こうしてABITはCeleron300Aブームの立役者として外せない定番マザーボードメーカーにのし上がることになりました。

PentiumⅡの性能に迫ったCeleron300Aの評価

マザーボード上のCeleron300A

Celeron300AのSlot1は唯一無二のCPUスタイル

当時、個体差や条件が整えばABIT BH6とCeleron300Aの組み合わせで450MHz動作が簡単なBIOS操作で実現できました。ベンチマークによってはPentiumⅡの性能に迫った、或いは超えたと話は熱を帯び始めていくことになります。

しかし、残念ながら開発元のIntelはこの出来の良すぎたCeleronの栄光を良しとせず、その後、ここまでのオーバークロック耐性をもった廉価版CPUは製造されることなく、もとからのOC熱狂マニアを除いて並みのPC自作ファンはOC路線からは徐々にフェードアウトしていくことになります。

もし、このCeleron300Aが巻きおこした「オーバークロック試しちゃおう現象」が、Intel自身が互換CPUメーカーの動きを遮るために故意にしかけたものだとしたら、それはそれで大成功だったと言えるでしょう。

その後、未だ、あれほどの化けの皮仕掛けCPUが登場しないところを見ると、どうやら故意ではなく開発工程の試行錯誤が生んだ偶然の脅威がCeleron300Aだったのでしょう。

これからも、あの黄金期に私たちが見た奇跡は伝説として語り継がれるだけで、Celeron300Aほどの夢と可能性を秘めたCPUは再来することはなく、ただ気持ちのどこかで再来を望み続けるだけなのでしょう。

Intel Celeron300A CPU