PDAという言葉を耳にすることがなくなった今、持ち歩くPDAを一つ選ぶとしたら自分が迷わず選ぶのはSONYのPEG-NX73Vです。
[no_toc]CLIE_PEG-NX73Vはソニーが出したPalm端末であるCLIEの数あるモデルの中でも多機能で且つ行きすぎた感のないスマートなモデルと言えます。
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二つ折りタイプの形状
SONYのCLIEとしてはこのNX73Vよりも前に、NX60・NX70Vといった二つ折りのモデルを販売していて、特にNX73Vが初めて二つ折りの形状を採用したという訳ではありませんがデザイン的な完成度を感じるのは後発のNX73Vと上位モデルのNX80Vです。
NX73Vの本体は、キーボードを使える開いた状態、閉じた状態、液晶面を表にして使える状態で折り畳んだ状態と3通りに変化させることができます。
液晶パネル側はこのように180°回転可能になっています。
製品の仕様
PEG-NX73Vの主なスペックは次の通り。
PalmOS5.0搭載しているこの端末ではCPUの性能が格段に上がっています。
- OS:PalmOS5.0 日本語版
- CPU:XScale PXA263(200MHz)
- 大きさ:タテ131.5(mm)×ヨコ71.9(mm)×厚さ21.8(mm)
- 重量:230(g)
- メモリー:16MB(DRAM)/32MB(フラッシュROM)
- 電源:リチウムイオンポリマーバッテリー
※厚さはクローズスタルのとき
二つ折りのスタイルを採用したことにより、サイドのボタン類やインターフェイスの配置も従来のCLIEとは変わっています。
本体左には、上からシャッターボタン、バックボタン、ジョグダイヤル、スライド式の電源スイッチが並びます。
右側には録音ボタンとメモリースティックスロットが配置されています。
NX73Vの特徴
他のパームデバイスと比べてPEG-NX73Vの大きな特徴は、カメラ機能を搭載していること、通信機器を使用可能なコンパクトフラッシュスロットがあること、ハードウェアキーボードが採用されていることなどがあります。
31万画素デジタルカメラ
NX73Vのヒンジ部には31万画素のデジタルカメラが搭載されています。
今となっては、ショボい画素数ですが、当時はガラケーを含めデジタルカメラと言えばこんなもんでした。
CFスロット
これもヒンジ部に近い場所ですが、NX73VにはCF_typeⅡスロットが装備されています。
当時はPHSの通信カードなどがあったので、このCFスロットに差し込めばメールやインターネットが使えるというものでした。
CFタイプのWifiカードなども存在しましたが、まだ今よりWifiスポットが少なく、あっても有料だったりしたので一般的ではなかったと記憶しています。
ハードウェアキーボード
二つ折りタイプのCLIEにはQWERTY配列のハードウェアキーボードが搭載されています。
スマホでフリック入力ができる時代には魅力を感じない機能かもしれませんが、これがあると画面に指紋が付いたりする心配がありません。
時代を卓越した機能性とデザイン
SONYがジョグダイヤルに力を入れていた時代に、その性能を最も開花させた情報端末はPEG-NX73Vだったといっても過言ではないでしょう。
CLIEは数あるPalmOS機の中でも、ジョグダイヤルの利便性を生かすためのランチャー(メニュー画面)を独自に開発していました。
これはNX73Vにも採用され、当時の携帯電話やノートPCなどにも搭載されたジョグダイヤルは、まさにPDA(CLIE)のために存在したかのようにその機能を開花させていました。
今思えば、PDAの衰退とともにジョグダイヤルもその姿を消していったかのようにも思えます。
PEG-NX73Vは時代が残した数多いPDAの中でも、搭載しているOS、機能性、大きさ、デザインなど様々な視点で比較して他の端末に引けを取ることがなく、また、現在情報端末として主流であるスマホと比較してもそれほど大げさな感じもなく優れたデザインです。
ジョグダイヤルやハードウェアキーボード、ヒンジ部に設置されたカメラなどは、一見時代が残した産物でしかなさそうですが、デジタル端末としての多様性という意味では供給が絶たれたために需要が衰退したとも感じ取れます。
液晶パネルを内側に畳める端末形状は現在のスマホではほとんど見かけませんが、薄型軽量よりも多機能を求めたシーンでは魅力的ではないでしょうか。
つい先日液晶画面が折り畳めるスマホが某社から発表されていましたが、ほぼ規格化されてしまった現代の疑似多様性に風穴を開けるならばPEG-NX73Vのようなデバイスはどうなのでしょう。
我々ユーザーはハードウェアボタンやジョグダイヤルが邪魔だと言った覚えはないし、二つ折りが無駄だと笑ったことさえないのです。
ハードウェアボタンが、ほぼ電源と音量だけになった樹脂製の板を持ち歩くことにやや退屈を覚えるのは私だけなのでしょうか。